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朝の駅のプラットホームには通勤や通学時間なので大勢の人がいた。
田舎の駅の乗車場所に柵などはなく、黄色い点字ブロックが地面に配置されている。
次の電車が来るのを待つ人達は列をなして並んでいたり、ベンチに座っていた。
ホーム際で楽しそうにはしゃぐ男子高校生。
お喋りをする女子高生。
椅子に座って新聞を読むサラリーマン。
立ったままスマホの画面を見つめるOL。
その中で、列を離れて自動販売機前で一人スマホを握りしめて震えている少年がいた。彼は眼鏡をかけた緑のブレザーの制服を着た男子高校生だった。
「ほら、もうすぐしたらこの駅には止まらない快速が通過するから、その瞬間に『スキル』使っちゃいなよ」
クスクス笑う女性の声が、自動販売機の後ろから聞こえていた。
姿の見えない声に男子学生はビクリと震え、
「で、でも…‥ボクにはこんな『スキル』しかないし…」
泣きそうな声で女性の言葉に抗った。
「大丈夫だよ。君の『スキル』なら足元がふら付いてホームから線路に落ちるだろうから」
「ボクには…そんなのムリ…」
「君はそれでいいの?このままずっと彼らに搾取されつづけるんだよ?せっかく別の高校に行ったのに逃れられなかったんでしょ?」
女性の言葉にはっとして、男子高校生がちらりと後ろを振り向くと、彼とは別の学ランの制服を着た3人が電車を待つ列の一番先頭に立ち、一人が何かの物まねをして盛り上がっていた。
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