第二章

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 駅近くのファミリーレストラン。凛橋里乃伽はケチャップの付いたフライドポテトを頬張った。財布に残るわずかな金で注文させられた。 「これ、うまいで。本気の自殺願望がないとそのアンクレットははめられへん。めちゃめちゃ美味しいなこれ。マジカルアンクレットや。うますぎるやろ」 「ポテトの感想、やめてもらっていいですか」 「ええで」  それは酒焼けしたようなおじさんの声だった。初め、彼女の口に合わせて誰かがどこかで喋っているのかと思ったがどうやらその声は彼女自身のものらしい。 「風邪で声が枯れてるんですか」 「デリカシーゼロか」  凛橋は僕の口に1本、フライドポテトを突っ込んだ。気にしていたらしい。 「鳴原総……君。私は2年。アンタは1年。呼び捨てにするで総君」 「呼び捨てにしてください」 「私はクソババアに悪い魔法で声を変えられた魔法使い見習いや」 「はい?」 「魔法使い見習いや」 「……はあ」 「魔法で声を変えられたんや」 「……そんなこともあるんですかね」 「あんねん」  酷い会話だった。 「クソババアって……魔法使いですか」 「私の師匠や」 「その師匠はどうして――」 「師匠言うな。クソババアって呼ぶんや」 「どうして」 「それが本名やから。クソババアが本名やねん」 「……そうですか。そのクソババアは――」 「呼び捨てはあかん。だいぶ年上や」 「クソババアさんはどうして凛橋さんの声を変えたんですか」 「凛橋さん言うな。私は里乃伽ちゃんや」 「話が進まないんですけど」 「このポテト食べてみ。美味しいで」 「あの、里乃伽ちゃん」 彼女はゴキブリでも踏ん付けたように目を見開いて口からポテトを落とし、それを僕の鼻の穴に突っ込んだ。 「ぬああああああああに、馴れ馴れしく下の名前にちゃん付けして距離縮めてきてんねん! アンタは私の彼氏か!」 「だあああああああああっ!」  僕は鼻息でポテトを吹き飛ばした。 「ふざけないでください! 一体、なにがどうなってるんですか! 僕は死にたいと思うと幻でも見てしまう病気にかかってるんですか? あなたの声が聞こえたんです! おじさんの声ですけど! あなたは一体何者なんですか! おじさんですかっ!」 「魔法使い見習いや、言うてるやろだああああれがクソジジイやああああっ!」
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