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里乃伽は猛然と立ち上がった。
「こんな美少女つかまえてようクソジジイ言うたなっ! もっと言葉選べ鼻からポテト!」
「すみません」
面倒なので反論なしに頭を下げた。彼女は僕を睨め付けながらポテトの乗った皿を自分に寄せて隠すよう食べ始めた。1本もあげない、ということらしい。
「それで、ですね。あなたは一体――」
「里乃伽ちゃんはあかんでぇ、あかんでぇ、言われてクソババアに声を変えられたんや。だから私が一人前の魔法使いになって自分で元の声に戻したろうって思ったんや」
「それと僕の身に起こってることと何か関係があるんですか」
里乃伽はポテトで僕の足元を指した。
「マジカルアンクレットや」
僕はズボンをめくり右足首に触れた。鎖の冷たい感触がある。視認はできない。
「何なんですか、これ」
「思いっきり目を閉じてみ」
「どうして」
「ええから」
しぶしぶ従う。
「閉じましたけど」
「もっと強く」
更にきつく目をつむる。すると4桁の数値がふっと頭に浮かんだ。真ん中にはコロン記号がありまるでデジタル時計だった。
怖くなって目を開ける。
「なんですか、これ」
「時間は?」
「98時間54分でした」
「その時間が総の寿命。アンクレットをはめてから100時間で死ぬ」
その言葉をすぐ理解できなかった。
「死ぬ。……誰が?」
「総や」
「僕が?」
「嬉しいやろ」
「……死ぬ? 冗談ですか」
「本当の話や」
僕は黙り込む。そんな僕を見て里乃伽はため息をついた。
「哲学者みたいに思い悩んでる振りしてアホを隠してるでこの子」
「……僕は……本当に死ぬんですか?」
「何回言わすねん」
僕はもう一度強く目を閉じた。またデジタル時計が頭に浮かんだ。時間は98時間53分。1分減っている。
「あの、とりあえず外してもらっていいですか、足首にはめたやつ」
「それはアンタ次第や」
里乃伽は肩にかけていたポーチからひとつのニッパーを取りだした。手の中に収まるほど小さなニッパーだった。
「マジカルニッパーや。これでアンクレットは切断できる。でもアンタから自殺願望が完全に消えへんとアンクレットは切られへん。どんなに力を込めても無理やねん。自殺願望がある者にしかはめられず、自殺願望が消えた者でなければ外れへん。だから今のアンタには無理やろう」
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