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「それが魔法使いになるための条件やねん。アンクレットをはめた自殺志願者を100時間のうちに救ってやらな私は一人前の魔法使いにはなられへん」
「よく分かりませんがもういいです。別の人を助けてやってください」
「自殺したいと思ってる奴なんかそう簡単に見つからへん。それにその貴重なアンクレットもアンタが死ねば使い物にならんようになる」
里乃伽はしばらく唸っていたが何かを決意したよう僕を見詰めた。
「そうや。希望や。希望を与えたる。そうしたらアンタも少しは前向きに生きられるようになるやろ。何でも叶えたるで。総の望みは?」
「いえ、余計な気遣いをしてもらわなくて結構です」
「ええねん、気にせんとって。私に土下座する必要ないで」
「僕の言葉は聞こえないんですか」
「早く望みを言うんや。殺すで」
「救いたい人に言う台詞ですか。望みなんてありません」
「ない? 望みがない?」
里乃伽は僕の両頬を強く横に引っ張った。
「望みなんていくらでもあるやろ。お金が欲しいとか、名誉が欲しいとか、誰かを殺して欲しいとか」
一瞬、あの三人組と生徒会長の顔が浮かんだが吐き出した息と共にその怨念を頭から消し去る。
「よう考えるんや。言うてみ、アンタの望みを」
里乃伽は僕の頬からそっと手を離した。
僕は視線をゆっくりと里乃伽に向けた。
「何でも叶えてくれるんですか」
「そうや」
何でも叶う。それが本当なら――
「もし、生き返らせ――」
「無理。殺す、の逆は無理」
「だったら時間――」
「無理。時間を戻すの無理」
「だったら――」
「無理」
「まだ言ってないです」
「はよ言うんや。何でも叶えたる」
ストレスが溜まる。
「だったらどんな――」
「無理。どんな女子のパンツでも盗む魔法は無理」
身体中を流れる血液が沸騰していく。煮えたぎる憤怒をなんとか理性で押し留める。
「ど、どうかお願いします。最後まで僕の話を聞いてください。一体、里乃伽ちゃんはどんな魔法が使えるんですか」
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