第二章

6/27
前へ
/104ページ
次へ
 突如、里乃伽は頬を赤くし、「ぬああああああにっ、二度目の過ち犯してんねん! 二度目ならまぁいっか。言うと思ったか! 里乃伽ちゃん言わんとってって言うたやないか! 頭悪いんか! 私らの距離感ぐちゃぐちゃやないか! なに私の人見知りの部分引き出してくれてんねん! なに私のピュアな一面引き出してくれてんねん! この引き出し上手! なに褒められてんねん! この褒められ上手!」 「あなたは、普通に話せないんですか」 「やかましいドアホ! 間抜け! この下着泥棒!」  僕はテーブルを叩いて立ち上がった。 「もおおおおおおお嫌だ! 嫌だああああああああ! 誰が下着泥棒だ! ふざけるのもいい加減にしろ!」 「やかましい! 馬鹿!」 「話を聞け! 馬鹿!」 「きゃああああああああああああっ! 馬鹿はお前だ馬鹿! 馬鹿!」 「うるさい馬鹿! 馬鹿! おっさん声!」 「うわあああああん! おっさん声ぇぇぇえええええんえんえん!」  里乃伽は号泣した。そして店を出るよう店員に頭を下げられた。  逃げるように店を出て駅に向かう。しかし、「えええんえんえん」里乃伽はまだ泣いていた。 「謝れええええええんえんえんえん」  おじさんの声で子供のように泣きじゃくる妖怪に呆れて僕は頭を垂れた。 「言い過ぎました。すみません」  里乃伽は涙を拭って鼻をかみ声を詰まらせた。 「総が私に馬鹿言うた。でも私、そんな理不尽なことを言う総を、人間として終わってる総を許したいんや。そこまで優しい自分にも感動してる。私、天使過ぎて背中から白い羽根とか生えたりせえへんかな。肩胛骨から生えるんかな。肩と羽根の間、かゆくなったりせえへんかな。あぁ神様、私が優しすぎて天使過ぎても、どうか背中から羽根が生えませんように。でも頭の上に輪っかとか浮かすのアリやでえええんえんえん」  僕は電柱に頭をぶつけた。気が狂いそうだった。 5分ほど歩くと里乃伽はころっと泣き止んだ。 「それで結局、総の望みは?」  ここ数時間まともな会話をした覚えがない。 「人の心が読めるようになりたいです」  僕はその場で思いついたことを適当に言った。でも、嘘じゃない。理解できない他人は多く、何を考えているのか知りたいと思うことがあった。  里乃伽は不敵に微笑んだ。 「そういう感じの、持ってるわ」
/104ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加