第二章

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「喧嘩させるって……。ちょっと待ってください。あなたは見習いとは言え魔法使いなんですよね。どんな魔法が使えるんですか」 「いろんな制約があんねんけど簡単に言えば人に意図した幻を見せられる」  次第に頭の中が整理されていく。一つの推論が浮かび上がった。 「間違ってたら言ってください」  ここが図書室であることを考慮し出来うる限り声を抑えた。 「さっき、林道君の答案用紙が満点に見えるよう種河に幻を見せました? いえ、そんなのどうだっていいです。あなたは魔法使いになるため自殺志願者を捜していた」 「なかなか見つからへんかった。でも偶然、駅ビルのカフェテラスで『死にたい』言うてる奴を発見した。これを逃す手はない」 「僕に幻を見せて自殺願望が本物か確かめた」 「駄目やったな。だから私が生半可な自殺願望を本物にしてやろうと――」 「追い込んだ。不良グループに絡まれるようきっかけを作った」 「生徒会長さんとも喧嘩させようと思った。けど、あんなにうまくいくとは思ってへんかった」 「なるほど。僕に心を読まれて本当のことが分かってしまうから自分に不利なことも全部喋ってしまうわけですね。僕の学校生活を滅茶苦茶にして自殺願望を掻き立ててアンクレットをはめさせて、今度はアンクレットを外すために僕を元気づければ都合が良いわけだ」 「まったく、魔法使いになる言うのも大変やで」 「人を弄んで自責の念に駆られませんか」  里乃伽は僕を睨み返した。 「泥棒扱いされたら命を張って疑いを晴らすもんや。不良に恐喝されたら最後まで戦うもんや。総は弱い。カフェで初めてアンタを見たときから弱虫や。もっと強くなり」 「どの口で言ってるんですか」  憤りのあまり握った拳が震えた。 「アンクレットを外します。あのニッパーを貸してください」 「そうやな。自殺願望が消えたかも」  里乃伽はポーチからマジカルニッパーを取り出し僕のズボンをめくって足首をまさぐり、目に見えない鎖をニッパーの刃で噛んだ。 「いくで」  グリップに力を込める。けれど鎖は切れない 「あかん。切れるなら簡単に切れるはずや。総から自殺願望が消えてへん」  里乃伽は僕の胸ぐらを掴んだ。 「いい加減にするんや。私とキスできて、アンタの親友も助けられて良いことばかり起こってるやろう。なんでまだ死にたいんや」  僕は失笑した。
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