第二章

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 その構えや素振りから察するに彼はずぶの素人だった。こちらは頼りない角材一本だが戦えそうだ。  そう思ったとき身体に重たい衝撃が走った。自分の膝が崩れ落ちていくのを感じる。何が起こったのか理解できない。視界が薄れていく。意識が朦朧としていった。  目を開ける。僕の手足はロープで縛られ倒れた冷蔵庫にくくりつけられていた。うまく縛られ立ち上がることができない。背中が痛む。どうやら背後から襲われたらしい。  目の前に3人組が立っていた。 「俺だぜ、俺。俺がお前を失神させてやったのよ」  海口は太鼓腹を揺らして笑った。僕がこの部屋に入る前から物陰に潜んでいたのかもしれない。  朝貝は僕の財布を持っており、そこから金を抜き取った。 「今日はけっこう持ってるな」  札束を数えながら朝貝は僕の頭を小突いた。 「明日も、明後日も、ずっと俺たちに脅されて金を払い続けるんだ。逆らえば殴られる。警察に言えば峯竹のオヤジが動く。そうなればお前の家族は終わり。お前はどうすることも出来ず俺たちの奴隷になるしかない。もう全部、諦めろ」  朝貝は僕の頭を靴で踏みつけた。 「お前は俺たちに喧嘩を売った。覚悟があってのことだろ?」  下から睨みつけると朝貝は僕の顔面を蹴った。  僕は地面に頬をこすりつける。目を開けると窓の外、遠くに林道の姿が見えた。くすんだビルの屋上からこちらを傍観していた。 『あ??あ、やられてやんの』  林道の声が頭の中で聞こえた。 「顔はやめておけ。教師がうるせえからな」  海口が言うと今度は腹を蹴られた。腹を守りたくても身体を縛られて身体を丸めることしかできない。朝貝は容赦なく僕を蹴る。 『弱いな』  蹴られている最中林道の声はずっと聞こえた。 『俺だったら一撃で全員やっつけてる』  身体中を蹴られる。僕は何も出来ずただ耐え続けた。  気を失いかけたとき、峰竹がポケットからカッターナイフを取り出したのが分かった。刃で僕の頬を叩いた。 「また金を持ってこい」  そう言って彼はナイフで僕を縛っていたロープを切った。  峰竹たちの低い笑い声が遠ざかっていく。立ち去っていく彼らの後ろ姿を見送ることしかできない。
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