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カフェテリアの一角、羽倉を呼び出した。
僕は彼女の正面に腰掛け、単刀直入に言った。
「林道君と本当にお付き合いをしてみてはどうですか」
羽倉はヒーローの決めポーズのよう両腕を伸ばした。
「な、なに?」
「ですから、林道君と本当にお付き合いをしてみてはどうですか」
羽倉は変身するよう腕を反対に回した。
「……どっ、どうしてそんなこと言うの」
「林道君は変人だと思います」
「……そうだね」
「無鉄砲で暴力的で向こう見ずです」
「そうだね」
「羽倉さんとお似合いだと思います」
「こらああああ! へっへっへっ。こらああああ!」
羽倉は右手を振り上げ怒り、左手で自分の頭を掻いて頬を緩めた。
「明日、林道君をデートに誘いませんか」
――僕にハンバーガーを奢らせた林道とこんな会話をした。
「羽倉さんと付き合ってることになってるだろう?」
「はねくら?」
「林道君がペリーって呼んでる娘だ」
「おう、あの開国が口癖の船乗りか。まぁ、そういうことになってる。お前も一緒に来航しないか、なんて提案をされた」
「それは林道君の妄想だろう」
「かもな。最近、夢と現実の区別が付かない」
「なんという人だ」
「褒めるな。俺はこれ以上自分を凄い人間だって思いたくない」
「誰も思っていないから安心しろ。羽倉さんと真剣に、本当に付き合ってみたらどうだ?」
「いいぜ」
林道の返答は軽かった。
「僕の言ってる意味、分かってる?」
「交際しようってんだろう。いいぜ」
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