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───「……ただいま。」
部活を終え、帰宅したあずさはいつものように一言そう言い玄関で靴を脱ぐ。
壁掛け時計の針は19時半を指していた。
すると、あずさのその声を聞いた途端に
───「あずさ!おかえり!」
あずさの帰りを今か今かと待ち望み、待ってましたと言わんばかりの勢いでキッチンから玄関へと姿を現したこの男…
────瀬野 光也(せのこうや)28歳。
あずさの兄で、見た目は一言で言えば美形。
背が高く、顔のパーツはあずさとどことなく似ている。
性格も面倒見が良く、穏やかで優しい為、幼少期の頃からよくモテていた。
そのモテモテぶりは現在に至るが彼女はいない。
会社員で役職は主任。
周りからはその完璧な容姿と働きぶりを認められ“デキる男”と言われている。
だが、そんな光也には一つ欠点があった────
「……あずさ!腹減っただろ?今日はお兄ちゃん、仕事早く終わったからあずさの好きな物いっぱい作ったぞ!先に飯にするか?それとも風呂入るか?」
あずさに向けられる光也の特別な優しい眼差し。
そう光也は妹のあずさを溺愛しているのだ。
その様子はシスコンと言っても過言ではない。
親友の碧や柊も、あずさに対しての度が過ぎる光也の態度を見て若干引いてる時があるのだった。
瀬野家は、あずさが幼い頃に父親を病気で亡くし、母と兄とあずさの三人家族となった。
しかし、母はあずさが中学生になると同時に仕事の都合で海外赴任をしてしまった為母親とは離れて暮らしている。
その為現在は光也とあずさの二人暮らしなのだ。
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