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ここは如月町(きさらぎまち)。
私、冬織雪子(ふゆおりゆきこ)が生まれた町。
私はついこの間まで東京に住んでいたけれど事情があってここに帰ってきた。
ここにいたのは9歳までの間だったか。
それからはこことお別れして、父の転勤に付き添い、家族共々東京の近郊に引っ越した。
正直、都会の空気は体に合わなかった。
喘息持ちの私には汚れてしまった空気がひどく苦痛で、この田舎町が恋しかった。
だから高校2年のこの頃、両親を説得して帰ってきたのだ。
ここ、如月町に。
もちろん、両親を説得するのは一筋縄にはいかなかった。一人娘を故郷に一人送るなんて彼らは簡単に許さなかった。父の仕事で都会から離れられない両親は私の願いを聞いてくれなかった。
でも助けてくれる人がいたんだ。
それが私の幼なじみの神山和久、今私が待っている人だ。
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