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「ユキ!!」
現れたのは制服にアースカラーのマフラーを適当に巻いている男子生徒。黒髪に大人びた顔立ち。
カズだ。
「カズ!遅いよぉ………」
自分もマフラーを適当に巻いて彼に駆け寄ると、
「ごめん、ユキ。マネージャーが休んでて部室の掃除頼まれた。」
と彼は特に悪びれた顔もせずしれっと言った。
彼はこういう人なのだ。
冷静なように見えて抜けている、そして感情を顔に表さない。
「そうなの?連絡してくれれば良かったのに。」
私はスマホをひらひらと振った。
あ、とカズが口を開ける。
どうやらこの時代兵器を忘れていたらしい。
まぁいいや、と私はカズの手を取って教室を出た。
「かえろー。さっきカズのお母さんからメール来たよ。」
「え?なんて言ってた?」
廊下を歩きながらカズに聞かれる。
「今日は鍋だってー」
そう言うとカズはおもむろにガッツポーズをした。
部活で疲れているのだろう。
早く帰ろう、と私はより強くその手を引いた。
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