1.依頼

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 黒崎 玲奈(くろさき れな)。  彼女は都内の公立高校に通っている。  特技は声真似。  小学生の時は持ち前の推理力と声真似で事件を解決したこともある。  その並外れた能力は、今も衰えてはいない。  今朝、玲奈は仏壇の前で手を合わせた。  仏壇には俊(しゅん)という兄の写真が置かれている。  俊は昨年、暴力団がらみの事件の銃撃戦で弾丸が脳幹をピンポイントで貫き、殉職した。  犯人検挙率ナンバーワンで、その功績が認められ、二階級特進している。 「お兄ちゃん、おはよう。今日も平和でありますように」  玲奈はそう言うと、ご飯を軽く済ませて学校に登校する。  学校への登校は徒歩だ。三十分あれば到着する……はずだったのだが。 「きゃああああ!」  路地裏から悲鳴が聞こえてきた。  駆け付けてみると、女性が腰を抜かして顔を真っ青にしていた。 「どうしました?」 「あ……ああ……あれ……!」  女性が指差した先をみると、そこにはナイフで背中を刺されて絶命している男性の姿があった。  玲奈は携帯を取り出して、警察に電話した。  通報を受けた練馬署の署員がやってくる。 「通報をくれたのは?」 「私です」 「高校生?」 「はい」 「登校中に災難だったね」 「いえ、慣れっこですから」 「はい?」 「いや、何でもないです」 「第一発見者は?」 「こちらの方です」  玲奈が示したところには落ち着きを取り戻した女性が立っている。 「あなたは?」 「風晴 聖子(かぜはれ せいこ)です」 「遺体を発見した時の状況を説明していただけますか?」  聖子は遺体発見時の状況を思い出す。  出勤に遅刻した聖子は、近道をしようと通りの裏へ入り、普段は通らない道を行った。  そこでたまたま遺体を発見したとのことだった。 「通報してくれた君はどうしてここに?」 「風晴さんの悲鳴が聞こえたから来てみたんですよ。そしたら……」 「そうだったのか。おっと、そろそろ行かないと学校に遅れるぞ」 「じゃあ、お言葉に甘えて」  玲奈は学校へと急いだ。
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