1.依頼

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 玲奈は帰宅した。 「ただいまー」  中は静まり返っている。  俊が非番で家にいる時はいつも返事をしてきていたが、今はそれもない。  玲奈は仏壇の前に向かい、手を合わせる。  今にもおかえりと言ってきそうだ。 「さて」  玲奈は部屋へ行き、パソコンを起動させ、メールをチェックした。  メールが一件来ている。  その内容は、調査の依頼だった。  妻が自殺をしたが、夫は他殺を疑っており、真相を調べてくれとのこと。  メールには連絡先が記載されていた。  玲奈は携帯を取り出し、送信者に電話をかけた。 「五位堂さんですか? 私、探偵の黒崎 玲奈です」 「依頼を受けていただけるんですか?」 「ええ。それで、詳しいお話を聞きたいので、今度の土曜日にお会いすることはできますか?」 「はい。お待ちしております。住所はメールで送った通りの場所です」 では──と、電話が切られる。  そして、土曜日がやってきた。  玲奈は先日のメールに記載されていた住所の場所までやってきた。  そこは一戸建てで、古そうな家だった。 ピンポーン──玲奈はインターホンを押した。  すると、中から年配の男性が出てきた。 「先日お電話した黒崎です」 「お待ちしておりました。どうぞ中へ」  玲奈は中へ入る。  リビングに案内され、腰掛けるよう促された。  玲奈はソファに腰掛けると、依頼人が麦茶をコップに入れて持ってきた。 「ああ、お構いなく」 それで──と、続ける玲奈。「ご依頼の件なんですが、詳細をお聞かせ願えますか?」 「何でも聞いて下さい。答えられる範囲でお答えします」 「では、亡くなった奥さんについて教えて下さい。名前は何というんですか?」 「岬です。五位堂 岬(ごいどう みさき)」 「亡くなられたのはいつですか?」 「ちょうど一週間前です」 「死因は何ですか?」 「首吊りです。パソコンに遺書があったので、プリントアウトしました」
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