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玲奈は帰宅した。
「ただいまー」
中は静まり返っている。
俊が非番で家にいる時はいつも返事をしてきていたが、今はそれもない。
玲奈は仏壇の前に向かい、手を合わせる。
今にもおかえりと言ってきそうだ。
「さて」
玲奈は部屋へ行き、パソコンを起動させ、メールをチェックした。
メールが一件来ている。
その内容は、調査の依頼だった。
妻が自殺をしたが、夫は他殺を疑っており、真相を調べてくれとのこと。
メールには連絡先が記載されていた。
玲奈は携帯を取り出し、送信者に電話をかけた。
「五位堂さんですか? 私、探偵の黒崎 玲奈です」
「依頼を受けていただけるんですか?」
「ええ。それで、詳しいお話を聞きたいので、今度の土曜日にお会いすることはできますか?」
「はい。お待ちしております。住所はメールで送った通りの場所です」
では──と、電話が切られる。
そして、土曜日がやってきた。
玲奈は先日のメールに記載されていた住所の場所までやってきた。
そこは一戸建てで、古そうな家だった。
ピンポーン──玲奈はインターホンを押した。
すると、中から年配の男性が出てきた。
「先日お電話した黒崎です」
「お待ちしておりました。どうぞ中へ」
玲奈は中へ入る。
リビングに案内され、腰掛けるよう促された。
玲奈はソファに腰掛けると、依頼人が麦茶をコップに入れて持ってきた。
「ああ、お構いなく」
それで──と、続ける玲奈。「ご依頼の件なんですが、詳細をお聞かせ願えますか?」
「何でも聞いて下さい。答えられる範囲でお答えします」
「では、亡くなった奥さんについて教えて下さい。名前は何というんですか?」
「岬です。五位堂 岬(ごいどう みさき)」
「亡くなられたのはいつですか?」
「ちょうど一週間前です」
「死因は何ですか?」
「首吊りです。パソコンに遺書があったので、プリントアウトしました」
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