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「どうしました?」
「岬さんに変わった様子はありませんでしたか? 八坂さんにお訊ねしたんですけど、近々大金が手に入るかもって言ってたそうです」
「いや、特にありませんね」
「そうですか。ちなみに、五位堂さんは岬さんが亡くなった時は?」
「会社で残業を。何人か一緒にいたんで、アリバイの照明はできます」
「そうですか……」
「あ! そういえば、あの時、家に電話したんです。ちょうど亡くなる直前、インターホンの音が聞こえました。どうして今まで忘れたんだろう?」
「それって誰かが来たってことでは?」
「そうですね」
「では調査に戻りますね」
玲奈はそう言って五位堂家を出ると、警視庁の捜査一課を訪ねた。
「玲奈ちゃん、どうしたの?」
玲奈は聡に楓が言っていたことと、五位堂が話していたことを説明した。
「なるほど。確かに他殺の疑いもあるな、それ」
よし──と、続ける聡。「他殺の線でも動いてみるか。再捜査班に言っとくよ」
「ところで、詐欺の被害者についてなんですけど」
「ああ、それね。風晴さんの知人に被害者はいなかったよ。ガイシャの方にはかなりいるけど、そこから容疑者を特定するのは難しいかな」
「でもやるんですよね?」
「もちろん。それが商売だからね」
苦笑いする聡。
「で、用はそれだけかい?」
「とりあえずは、そうですね」
「じゃあ俺は捜査に行くから」
聡はそう言って去っていく。
玲奈も警視庁を出た。
玲奈は五位堂家の近隣住民に聞き込みをした。
すると、事件当夜、近隣住民が五位堂家を訪問する何者かを目撃したとの情報を入手した。
玲奈はその住民の証言を元にモンタージュを作成し、繁華街や駅前などで見当たり調査を始めた。
そして数時間後、玲奈はモンタージュの人物にそっくりな男を見付けた。
玲奈はその男を尾行し、自宅を特定した。
場所は練馬の住宅街に建つ古ぼけたアパートだった。
姓は吉崎だ。
玲奈は吉崎のポストから郵便物を取り出した。
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