prologue:Tack

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「・・・いくか」 僕はあまり考えないようにする。 考えるといろんなことを思い浮かべてしまう。嫌なことも思い浮かべてしまうため、昔から考えることをするのは嫌いだった。 またペダルを踏みしめて、自転車を走らせる。少し休んだので、さっきより速いスピードでコンクリの道を進んでいく。 生きてる。まだ生きている。 苦しい。やめたい。 なんで・・・いつも・・・。 いろんなことが頭によぎる。しかし、揺らぐことのない決意が僕のなかにはある。 そうこうしてるうちに、目的地につく。人は・・・いなそうだ。 人がいないことに安心し、近くのベンチに座る。 ドドドドドドドッと大きな音が下から聞こえてくる。 そう、ここは滝がある。しかも、日本では珍しい大きな滝だ。一度、ここに父さんと一緒に来て、僕は感動した覚えがある。 今まで生きてきた中で、唯一感動できた場所だ。 そして、僕がこれから死ぬところだ。 僕は両耳に音楽プレーヤーを取り付けて、好きな音楽をつける。タイトルは「G線上のアリア」だ。 僕はリュックサックの中から保温してある唐揚げ弁当を取り出す。 「いただきます」 僕は手を合わせ、最後の晩餐となる好物に感謝をささげる。 寒さで震える手で箸を取り、唐揚げをつかみ、食べる。 とても、おいしい。いままで食べてきたどんなご飯やおかずよりも、おいしかった。 少しだけ、冷たさを感じることはあっても、悔いのない食事だ。 そして、どんどん容器からは食物は無くなり、最後には無くなっていく。
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