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その後はひたすら無言でパンを頬張った。当然のことながら、コージは私より先に食べ終えた。意味もなくファイルを目の前に開き、机の上に頬杖をついて、ファイルではなく私を横からガン見してる。
た、食べずらい。見られてることはヒシヒシと感じていたけれど、そちらに視線を向けられなかった。
なんとか視線に耐え抜き、テーブルの上を片付けていたら、
「怒ってるの?」
と、真面目な口調でコージが言った。別に、怒っていたわけではない、だから、驚いた。コージの目には私が怒っているように見えたのだろうか? 目を丸くして隣に視線を向けたら、チュッといきなり触れるだけのキスをされた。
「ちよっ、と、ここ会社だよっ?」
焦って離れた私に、
「ごめん」
「えっ」
「黙っててごめん――、寂しい思いさせてごめんな」
コージの優しい声を聞いたら、本当はずっと我慢していた気持ちが溢れてきて、泣きそうになる。ここは会社だ……泣いたらだめだ。
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