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* * *〈葉月潤.side〉
数ヶ月後ーー。
その日の午後、俺たちは電車から無人駅に降り立った。
男4人と、女1人の計5人。
5人とも、同じ学校に通う高校の写真部だ。
「つーいたー!」
リーダーの隣で、音無正人が元気よく叫んだ。
リーダーが不機嫌そうに眉を寄せて正人を睨む。
「…てめぇは元気だな、正人」
「だってリーダー!見てくださいよ目の前の景色を!砂浜!海っスよ!」
「あーうるせぇ、うるせぇ」
リーダーこと、寺田葉は迷惑そうに耳を塞いだ。
その隣にくっついているのは、唯一の女子部員である、篠岡里子。相変わらず無表情で口を閉ざしている。
無人駅のすぐ目の前には、田舎の静かな海が広がっていた。サーフィンを楽しんでいる2人組みの男女が見える。
まだ5月のゴールデンウィークだから、泳ぐにはちょっと寒そうだ。
「リーダー、このまま泊まる民宿に直行ですか?」
「あぁ、そうしようぜ、荷物もあるしな。14時に伺うよう言ってある」
俺がリーダーに問いかけると、リーダーは腕時計を確認しながら言った。
すると俺の隣にいた男が声を上げる。
「え~、電車で2時間移動の次は歩くのかい?いい加減疲れたよオレ」
「…お前はずっと寝てただろ、神楽」
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