上【怨村-オンソン-】

4/83
前へ
/238ページ
次へ
* * *〈葉月潤.side〉  数ヶ月後ーー。  その日の午後、俺たちは電車から無人駅に降り立った。  男4人と、女1人の計5人。 5人とも、同じ学校に通う高校の写真部だ。 「つーいたー!」  リーダーの隣で、音無正人(おとなし まさと)が元気よく叫んだ。  リーダーが不機嫌そうに眉を寄せて正人を睨む。 「…てめぇは元気だな、正人」 「だってリーダー!見てくださいよ目の前の景色を!砂浜!海っスよ!」 「あーうるせぇ、うるせぇ」  リーダーこと、寺田葉(てらだよう)は迷惑そうに耳を塞いだ。  その隣にくっついているのは、唯一の女子部員である、篠岡里子(しのおかりこ)。相変わらず無表情で口を閉ざしている。  無人駅のすぐ目の前には、田舎の静かな海が広がっていた。サーフィンを楽しんでいる2人組みの男女が見える。 まだ5月のゴールデンウィークだから、泳ぐにはちょっと寒そうだ。 「リーダー、このまま泊まる民宿に直行ですか?」 「あぁ、そうしようぜ、荷物もあるしな。14時に伺うよう言ってある」  俺がリーダーに問いかけると、リーダーは腕時計を確認しながら言った。 すると俺の隣にいた男が声を上げる。 「え~、電車で2時間移動の次は歩くのかい?いい加減疲れたよオレ」 「…お前はずっと寝てただろ、神楽」
/238ページ

最初のコメントを投稿しよう!

740人が本棚に入れています
本棚に追加