上【怨村-オンソン-】

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 俺は横目でその男ーー神楽拓美を睨んだ。  目立つ明るい金髪美少年は、潮風に揺れる前髪を掻き上げて目を細めると、目の前の海を少し興味深そうに見つめる。CMのワンシーンを見せられたような気分だ。 「まぁ、神楽は都会の人間だしな。田舎の長距離移動は大変だろ」 と、リーダーが言った。 「そうですねぇリーダー。同じ景色ばっかり続いてつまらないですよ」  神楽はそう言ってにこっと笑う。  田舎を馬鹿にする都会人め…。 「けど、オレは田舎が好きだよ。この広い海も景色も素晴らしいじゃないか。たまらないね!」 「そっすよねー神楽せんぱい!」  2人の問題児が目の前の海に向かって両手を広げて叫ぶ。 はぁ…この問題児2人と、2泊3日も一緒かよ、今から胃が痛くなって来たぞ…。 「さぁ行こうか、お世話になる民宿へ」 「神楽先輩!俺カメラ持ってきたんスよ!なんか霊的なもの感じたら知らせて下さいっスよ!」 「任せたまえ正人君」 さっそくアホ2人がはしゃぎ始めやがった…。  荷物を持って先に駅の坂道を下り始めた神楽と正人の後に続き、俺たちも歩き出す。 「あ、篠岡さん。荷物持ちましょうか?」 「…平気」  女子の二泊三日分の荷物はまぁまぁ重そうだ。  小さい肩掛けバッグとボストンバッグを持っている篠岡さんに俺は言ったが、彼女は小さな声でそう言って首を振る。
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