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口調は、投げやり。
「……ホントに!?」
諦めかけていただけに、口調なんてどうでもいいと思えるくらい、心底嬉しい。
アタシは思わずコウくんの顔を覗き込みに行って……そして、反射的に身を引いた。
ちょっと…………何、その怖いカオ!
「体、揉んどけ。筋肉痛になっても動いてもらう」
…………内容は優しいのにな。
さすがにアタシも、もう、外見の厳つさだけでコウくんから逃げたりしない。けど……。
「着がえろ」
ぶっきらぼうに、コウくんは更衣室へと消えて行った。
その背中が険しくて。
もしかして……アタシの覚えの悪さに怒ってるのかな……?
でも、熱意があったって運動神経ばかりは、どうにもならない。
確かに教える側になってみれば、この上もなくがっかりした気持ちになるだろうけど……。
でも、
「……コウくん!
明日もよろしくお願いしますっ!」
更衣室にむかって声を張った。
弱音は吐かない。
稽古を続けていけば、きっといつか筋肉もつくし、ちゃんとした動きができるようにもなるはずだ。
そう、思うしか、今はない。
早くも痛みだした足をひきずりながら、アタシは寮へ帰る道すがら、頭の中で一生懸命今日の動きの復習をした。
生ぬるい風にため息をつき、明日はしっかり爪を切ってこよう、と思いながら。
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