5 特訓with蒼→アイリ

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「じゃあまず、脱いで?」  ……………………は?  それは、遅い梅雨に入ったばかりの、ジメジメとした生徒会室でのことだった。  ソウくんの言葉で、アタシの頭の中に引き気味のハテナが踊る。  ……何、言ってるの?  混乱したせいか、どんどん顔が熱くなって…………ヤバい。何、この状況?  そっと様子を窺っても、ソウくんは相変わらずの爽やかな王子様スマイルを浮かべるだけ。  カッコイいけどっ…………うぅ。でも、言うことは全然爽やかじゃないよ!? 「ふふ、そんなマヌケ面してないで」  クスクスと心底楽しげに言われても、指示された意味がわからないんだからどうしようもない。  ふん。マヌケな顔で悪うございましたね。     ……ってかさ、ソウくん、王子って言うよりもしや……黒…………?  なんとなく、性格の悪い香りが……。  間違いなく、二面性はあるよね? 「あぁ、そうだった」  ふと何かを思い出したように軽く頷く。  意地悪なくせに、そんなちょっとした動作さえも絵になるから、ちょっと悔しい。  神様って不公平!  ……ていうか、絶対自分の魅力をわかってやってるよね。  ソウくんて………………どうなのよ……。 「そうそう。ちょっと待っててね」  今日も窓際のイスに腰掛けたソウくんは、スマホを取り出すと鮮やかな手つきでメールを一本、打って送った。  ねぇ、会長? 校内ってモバイル禁止じゃなかったですっけ?  それを気軽にポケットって……。 「ところで、コウとの特訓はどう? 成果はあった?」  ほんの雑談という口振りだった。だからアタシも軽く答えた。 「まぁ、多分」  毎日の稽古で、ずいぶんと体力がついてきた。少しだけど、筋力も。 「順調、だと思う」  敬語はうざったいから要らない。       そうバッサリ切り捨てられて、アタシはソウくんともコウくんとも、普通にしゃべることになっている。 「あれ? 自信ないの?」  曖昧な表現を指摘され、アタシは深く息をついた。 「……アタシとしては変わってきてるって思うんだけどね。でも、世間一般と比較したら成長が冗談抜きで遅いから」  多少変わって終わり、ではダメなのだ。  アタシの目標は、あくまで、優勝。 「ふーん……クレハちゃんがそう思うなら、まだまだなのかもね……?」
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