12 事前御披露目

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 それを……成果をコウくんに訊きたかったのに。  舞台袖からすっと出ると、アナウンスの中、二人並んで正座する。 「何だありゃー!?」  コウくんの妙なカッコに上がった冷やかしが、アタシ達の佇まいに飲まれてしぼんだ。  眩しいライト。  幸い、視線のすぐ先、最前列にアイリさん。  祈るように真剣に、アタシを見てくれている。  ……そうだ。成果はたぶん、あったと思う。  アタシは、三人に育てられた。  この場所に立てるよう育てることが、コウくんの、そしてソウくんと、アイリさんの仕事だった。彼らが、手を抜くはずがない。  それならアタシの仕事は……存分に成果を発揮して、しっかりみんなを()すること。  会場を静寂に導いて、クレハというみんなの努力の結晶を見せつける。  このステージで主役を見事演じきることだけが、みんなの苦労を水の泡としない方法だ。  ピーンと。  張り詰めた緊張感が心地良い。  この感覚も育てられたことの一つ。  大丈夫。アタシはできる。凛として。  すべての努力の証を、披露しよう。
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