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それを……成果をコウくんに訊きたかったのに。
舞台袖からすっと出ると、アナウンスの中、二人並んで正座する。
「何だありゃー!?」
コウくんの妙なカッコに上がった冷やかしが、アタシ達の佇まいに飲まれてしぼんだ。
眩しいライト。
幸い、視線のすぐ先、最前列にアイリさん。
祈るように真剣に、アタシを見てくれている。
……そうだ。成果はたぶん、あったと思う。
アタシは、三人に育てられた。
この場所に立てるよう育てることが、コウくんの、そしてソウくんと、アイリさんの仕事だった。彼らが、手を抜くはずがない。
それならアタシの仕事は……存分に成果を発揮して、しっかりみんなを魅すること。
会場を静寂に導いて、クレハというみんなの努力の結晶を見せつける。
このステージで主役を見事演じきることだけが、みんなの苦労を水の泡としない方法だ。
ピーンと。
張り詰めた緊張感が心地良い。
この感覚も育てられたことの一つ。
大丈夫。アタシはできる。凛として。
すべての努力の証を、披露しよう。
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