第1章

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その後、あたしは腕を強くつかまれてあざになったり、足を痛めつけられて逃げられなくさせられたりしながら、ここにつれてこられた。 幸い、奴らに陵辱などはまだされていないけど……。 これからが、不安だよ……。 そして、お母さん達が死んだ光景を浮かべても心がぽっかりと穴が開いたような気持ちになるだけで、涙があふれないことに、自分の心が麻痺しているのがよくわかった。 だけど、この後されることの恐怖や不安は、あたしの体に訴えかけてくる。 逃げなきゃと。 でも、逃げる術なんて見つからないよ……。 そして、逃げたあとに、あたしはどうすればいいの……? 希望と絶望、その間をあたしの思考はさまよい続ける。 「敵の潜伏場所を発見。どうやら、大戦中に作られた軍事研究所らしいな」 『地図にも載ってない秘密の場所のようだよ。ロシアの上のほうに掛け合わないと情報は出ないと思う』 「時間が無い。このまま潜入する」 『了解、気をつけてね』 あれから、二十分近く、吹雪の中を歩いて敵の基地を見つけることができた。 このあたりの地形の所為か、きちんとしたデータはないが、美恋と言う少女を直ぐに助け出さないといけない。 潜入開始だ。 俺は、双眼鏡で確認したコンクリートで作られたフェンスの隙間まで移動する。 そこから、覗き敵が居ないかを確認する。 見張りはいないようだった。 俺は、1mもない隙間に体をねじ込み中に侵入する。 研究所は三階建てだ。 ガラス越しに視認されても気づかれないように、雪の上を這って進む。 コートが白なので、いいカモフラージュになる。 研究所の一階の窓の側までついたところで起き上がり、静かにのぞく。 丁度、敵は一人もおらず、侵入には最適だった。 どうやら、リバティイーターも近くに居るようで、マジックプログラムが使用可能になっているのを確認して、胸元の鞘にさしていたサバイバルナイフを抜く。 マジックプログラム、高周波振動魔法『高周波ナイフ』を発動させて、静かに切り裂く。 その穴から入り込み、近くの曲がり角に身を潜める。 そこから、曲がり角の壁に張り付いて、先の廊下を覗いてみた。 すると、白衣を着た男がゆっくりとこちらに歩いてきていた。 ここの研究員だろう。 さて、どうするか。 と、考えていると、ふと研究員の動きに違和感を覚える。 オレは、壁から離れ、その研究員の目の前まで歩いていく。
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