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彼は、いきなり立ち上がり、走りだす。
「きゃっ」
微妙に揺れて、少し気分が悪くなりそうだった。
乗り物酔いならぬ、人酔い。
「ここから、少し遠い場所に迎えが来ている。そこまでこの調子だが、我慢してくれ」
彼は、そういいながら、銃を発砲していた。
姿は見えないけど、さっきの人たちの仲間が邪魔をしているのだろう。
「目はつぶっておけ。これ以上、こんなものは君は見るべきじゃない」
ジャノミチさんは、あたしに優しく言ってくれた。
……もう、あたしがこの現実に無理に立ち向かわなくていいのだと。
彼は、ガラスを割るとそこから、飛び出て雪の上を走る。
コートだけじゃ素足は隠せないので、少し寒い……。
PULLLL……と携帯電話のような音がジャノミチさんの左腰のケースから聞こえてきた。
あたしが、疑問に思っていると「そのケースを二回叩いて」といいながら、後ろにいる(彼にとっては前にいる)敵を迎撃している。
あたしは、そのケースをトントンと手のひらで叩くと、音声が流れてきた。
『今、そっちに迎えいくから正面扉に走って!』
「了解」
その声に彼は返事をすると、手のひらサイズのボールのようなものを持ち、ピンを抜いて投げて、全速力で走り出した。
「耳をふさげ!」
彼に言われてあたしは反射的に耳に両手を当てる。
瞬間、建物の一部が爆発した。
その辺りの瓦礫は崩れ、姿は見えなかったけど敵はみんな下敷になったようだ。
すると、バキャ!と言う木を折るような大きな音が聞こえた。
それと共に、エンジン音も響いてきた。
「飛ぶぞ」
「え?きゃっ!?」
いきなり、彼がジャンプし、あたしはおもわず舌をかみそうになった。
彼が着地すると、あたしの視界には黒い座席に乗り込んでいた。
上から重い扉が閉じられて外と隔離される。
ジャノミチさんはあたしを座席に下ろすと、
「俺も迎撃する!運転はまかせた!」
大声で、指示をした。
よく辺りを見てみると、どうやら映画に出てくるような大きな乗り物の中のようだった。
装甲車、だったっけ?
その装甲車に銃弾などが当たり、激しい金属音が響いている。
このまま、逃げ切れるのかな……?
でも、逃げ切っても……。
あたしには、居場所は無い。
俺は、備品の中においてあった機関銃を手にとって、装甲車の天井の扉を開き、車体の上部に乗る。
「ボス!着陸したポイントでノアが待っている!それまでに追っ手を!」
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