第1章

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俺は、その怪物の一体に攻撃を始める。 『だあああああああああ!』 叫び声と共に、渾身の力を加速させた拳を、連続で叩き込む。 怪物の鱗を砕き、削ぎ落とし、血液が流れ出す。 「グげェ…!」 うめき声をもらしながら、怪物がひるむ。 その隙に、一歩下がって、スマートフォンの液晶パネルをタップする。 発火魔法を手のひらから発動し、火炎放射器のようにはなち、怪物を焼き殺す。 怪物が、炭になるのを見ながら、人間を殺した罪悪感を覚えたが、押さえ込んだ。 作戦は、順調に進んだ。 ―――ここまでは。 怪物を片付け終えて、敵が拠点にしてるポイントを襲撃。 何人かのテロリストを捕縛してる最中、その地獄が始まった。 俺には、それが一瞬の出来事でわからなかった。 高層ビルの半ばにいたはずなのに、空が見えることが。 周囲を確認したとき、それは絶望とも言っていいだろう。 捕縛していた仲間が、テロリストごと、肉片に変わっていたのだった。 川島さん、小波さん、山岸さん、この半年間、戦ってきた仲間が、僅かな肉片を残して消えていた。 次の瞬間、ズシンと言う大きな音と共に、ビルが揺れ、辺りが砂埃に包まれる。 ヘルメットのバイザーが解析した結果、その原因はビルの一部が地面に落下した影響だった。 『なんだよ、コレ……!?』 敵の攻撃だ、それだけは理解できた。 だけど、規模が違いすぎた。 何が、どうなったか。 それを考え続ける俺を黒い影が覆う。 振り向き、その姿を視認した瞬間―――…… ……―――その事件は、部隊の戦闘員四人を犠牲にして、解決した。 テロリストたちは、末端だったため、たいした情報もなければ、根本的な解決にはなっていなかった。 その、大規模な事件の騒動を治めるために、俺たちの組織の情報を公開し、様々な対策が練られた。 基本的な電子機器にリバティイーターウイルス、通称LEVに感染しないようにマジックプログラムによるウイルスバスターを入れるようになった。 LEVの反応を感知すると自動で発動する仕組みだ。 そのほかにも法律などの改正がなされた。 それが、この事件の全てだ。 プロローグ 日本には珍しい洋風の墓石の前に立つ。 その黒板には、自分の親しい人の名前が刻まれていた。 遺品である、吸えもしないタバコを一本、火をともしくわえる。 想像通り、タバコの紫煙が、のどや肺を刺激して咳き込んでしまう。
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