第1章

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年齢的にも、タバコはまだ無理のようだ。 でも、一度だけ、あの人の真似をしてみたかった。 少し、近づけるような気がするから。 咳き込んで口を押さえたとき、初めて自分が震えていることに気がついた。 頬に手を当ててみたが涙は流れてはなく、心だけで悲しんでいるようだ。 たった一呼吸だけで、タバコの火を消し、もう一つの遺品である携帯灰皿にしまう。 隣で泣く、親友たちにも目をやる。 二人は、何度目の涙なのだろう。 この人や、二人の父親が死んだとき、葬式、そして今、何度も泣き止んでは泣いている気がする。 二人と違って、自分には、泣くことなどまだ許されないのだ。 もう、涙はでなかった。 変わりに、胸に穴が開いた感覚は、今もなお空白のままだ。 黒い喪服の集団から一歩離れて、一人の老人と向き合う。 背筋はピンとしているが、顔の皺や、頭の白髪でそれなりの年だというのがわかる。 「もういいのか?」 「ああ……もう、大丈夫だ」 「そうか……。これから大変なことになるが?」 「問題ない」 「俺は、俺のために戦う」 自分の手が、血で汚れても構わない。 もう、この人が戦う必要はないのだから。 プロローグ2 魔女、そう何度か呼ばれ、嫌われたことがあった。 そのたびに、引っ越したため、特になにもなかったけど、少し悲しく、寂しい気持ちになったことがある。 だから、あたしには、いつも家族しか大切な人はいなかった。 この寒い大地の小さな街で、静かに暮らしていくのだと、そう思っていた。 だけど、全部が無くなってしまった。 あたしは、何もできず、失われる瞬間をただ見つめるだけだった。 そこから、絶望が始まる。 この鉄格子の中で、先に待ち受ける何かに、恐怖することしかできない。 あとは、ただ、祈るだけ。 誰か、助けて……! 声にできず、心の中で叫び続ける。 涙を流して、神でも悪魔にでも縋り付いて、祈り続けるだけだった。 2024年。 あの事件から四年が経ち、俺、蛇之道狡は21歳になった あれから、俺達の組織、HOUNDは、世の中に知れ渡り、日本どころか、世界中に広がる大きな組織となった。 そして、権力も膨れ上がっていった。 だが、構成メンバーは百人程度である。 少数精鋭で成り立つほど、怪物化現象、リバティイーターの発症数は少ない。 それでも、世界に必要とされる組織である。
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