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『彼女のデータを奴らに奪われるわけにはいかないと思ったロシア軍の要求だ。だが、我々としては、もちろん無事に救出してほしい。我々の存在意義と、これからのためにだ』
「もちろんだ。任務を開始する」
通話を終了し、俺はノアの乗組員に「ジョージから送られてきたポイントに向え!」と指示を出し、少女のデータを確認する。
長く綺麗な銀髪を持つ、どこか悲しげな色の表情をもつ可愛らしい少女だった。
先ほどまで任務をしていた場所が、ロシアに近い土地だったので、移動には3時間程度で済んだ。
冷え切った体を、熱いシャワーで温め、ツバサの作る美味い食事を食って、腹を満たす。
武器や、情報端末の調整、管理をしているうちに、その場所に着いた。
ロシア軍からの情報によれば、追跡部隊との連絡が途絶えた地点らしい。
あいつらのアジトは、おそらくこの近くなのだろう。
その場所から二キロほどはなれた場所に着陸する。
背中にスナイパーライフルを背負い、腰のガンホルダーにハンドガンを装備し、吹雪く凍土に降り立った。
まずは、ロシア軍の追跡部隊の最期の場所へ向かう。
吹雪は強いが、雪は浅く積もっているので、その中の移動は大変ではなかった。
むしろ、この視界の悪さは利用できるはずだ。
その前に、体温が奪われているので、なるべく早く敵のアジトで暖をとりたい所だ。
そんな考えをしている間に、ポイントを見下ろせる崖の上に到着した。
雪の上をホフクして、淵まで移動し、覗き込む。
この吹雪の中では、衛星写真などは無理だったのか、詳しい情報は知らなかったが、今、自分の目で確認することができた。
追跡部隊は全滅。
白い雪を紅く染めて、肉の塊や、残骸が、そこら中に散らばっていた。
時間がそれなりに経過していたので、少し雪で埋もれていたが、十分視認可能だった。
そして、その周りには、奴ら……リバティイーターがいた。
人間を元にしてはいるが、この極寒の地に似合うトナカイを組み合わせた姿だった。
ここの見張りだろう。
ふと、あの時を思い出す。
もう、繰り返したくない。
俺は、覚悟を再確認して、情報端末を見る。
もうマジックプログラムは使用可能なようだ。
今、できる最善を考えて行動に移す。
背負っていたスナイパーライフルを構えて、そのトナカイの額に照準を合わせる。
そして、このスナイパーライフルに装備されているマジックプログラムを発動した。
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