第1章

8/21
前へ
/21ページ
次へ
『彼女のデータを奴らに奪われるわけにはいかないと思ったロシア軍の要求だ。だが、我々としては、もちろん無事に救出してほしい。我々の存在意義と、これからのためにだ』 「もちろんだ。任務を開始する」 通話を終了し、俺はノアの乗組員に「ジョージから送られてきたポイントに向え!」と指示を出し、少女のデータを確認する。 長く綺麗な銀髪を持つ、どこか悲しげな色の表情をもつ可愛らしい少女だった。 先ほどまで任務をしていた場所が、ロシアに近い土地だったので、移動には3時間程度で済んだ。 冷え切った体を、熱いシャワーで温め、ツバサの作る美味い食事を食って、腹を満たす。 武器や、情報端末の調整、管理をしているうちに、その場所に着いた。 ロシア軍からの情報によれば、追跡部隊との連絡が途絶えた地点らしい。 あいつらのアジトは、おそらくこの近くなのだろう。 その場所から二キロほどはなれた場所に着陸する。 背中にスナイパーライフルを背負い、腰のガンホルダーにハンドガンを装備し、吹雪く凍土に降り立った。 まずは、ロシア軍の追跡部隊の最期の場所へ向かう。 吹雪は強いが、雪は浅く積もっているので、その中の移動は大変ではなかった。 むしろ、この視界の悪さは利用できるはずだ。 その前に、体温が奪われているので、なるべく早く敵のアジトで暖をとりたい所だ。 そんな考えをしている間に、ポイントを見下ろせる崖の上に到着した。 雪の上をホフクして、淵まで移動し、覗き込む。 この吹雪の中では、衛星写真などは無理だったのか、詳しい情報は知らなかったが、今、自分の目で確認することができた。 追跡部隊は全滅。 白い雪を紅く染めて、肉の塊や、残骸が、そこら中に散らばっていた。 時間がそれなりに経過していたので、少し雪で埋もれていたが、十分視認可能だった。 そして、その周りには、奴ら……リバティイーターがいた。 人間を元にしてはいるが、この極寒の地に似合うトナカイを組み合わせた姿だった。 ここの見張りだろう。 ふと、あの時を思い出す。 もう、繰り返したくない。 俺は、覚悟を再確認して、情報端末を見る。 もうマジックプログラムは使用可能なようだ。 今、できる最善を考えて行動に移す。 背負っていたスナイパーライフルを構えて、そのトナカイの額に照準を合わせる。 そして、このスナイパーライフルに装備されているマジックプログラムを発動した。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加