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「警安特課だ。
仲間は全員確保した。
もうやめにしないか」
「ああ、ここのトップが、話に応じるってんならな」
努めて穏やかに、しかし威圧を込めた眼差しでしぎなが呼び掛ける。
フルフェイスヘルメットからの応答は、緊張と動揺がひしひしと伝わってくる、素人っぽい声だった。
『柱が邪魔だ』
不意に入った通信は、向こうのビルの屋上に配置された狙撃手からのものだった。
報告の通り、板東は窓側中央の柱を背にしている。
「誰にそそのかされたかは知らないが、無茶なことはやめておけ。
今ならまだ間に合う」
「間に合う?」
しぎなの言葉に何の感情をいだいたのか、板東は銃を持つ手を後頭部へ回し、ヘルメットを乱暴に脱ぎ捨てた。
床を転がるヘルメットは、しぎなの足もとで上下が正しく停止した。
犯人の素顔があらわになる。
「…………」
しぎなはわずかに眉をしかめた。
醜い顔面だった。
両目は黄色くにごって落ちくぼみ、ほほはでたらめにねじれてしわめいていた。
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