・第1話〔1〕

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  「警安特課だ。 仲間は全員確保した。 もうやめにしないか」     「ああ、ここのトップが、話に応じるってんならな」      努めて穏やかに、しかし威圧を込めた眼差しでしぎなが呼び掛ける。   フルフェイスヘルメットからの応答は、緊張と動揺がひしひしと伝わってくる、素人っぽい声だった。     『柱が邪魔だ』      不意に入った通信は、向こうのビルの屋上に配置された狙撃手からのものだった。   報告の通り、板東は窓側中央の柱を背にしている。     「誰にそそのかされたかは知らないが、無茶なことはやめておけ。 今ならまだ間に合う」     「間に合う?」      しぎなの言葉に何の感情をいだいたのか、板東は銃を持つ手を後頭部へ回し、ヘルメットを乱暴に脱ぎ捨てた。   床を転がるヘルメットは、しぎなの足もとで上下が正しく停止した。   犯人の素顔があらわになる。     「…………」      しぎなはわずかに眉をしかめた。   醜い顔面だった。   両目は黄色くにごって落ちくぼみ、ほほはでたらめにねじれてしわめいていた。  
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