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人質に捕られている男からは嫌悪のうめき声が、女からは泣き声に似た悲鳴が上がった。
「間に合うと思うか?
もともとのDNAがもとに戻せないほど複雑にエラーを起こしている。
どんなに治療をほどこしても、3ヵ月でこんな顔になっちまうんだよ。
本当に賠償金だけで間に合うと思うのか!?」
板東は声を荒らげた。
『ガラスを割って注意をそらす。
合図をくれ』
狙撃手からの声がして窓ガラスの一点に照準レティクルが現れる。
狙撃銃がそこを狙っているという意味だ。
「本当にこんなことをしてトップとやらが、お前の要求に応じると思うのか?」
しぎなは相手に気取られぬよう話を続けた。
「撃つなら俺を撃て。
どうせその女性は撃てないんだろう。
お前たちは素人だ。
簡単には人は殺せない。
しかし、お前の本気をトップに示すには誰かを撃たなきゃならない。
俺も、一般市民が犠牲になるよりは、ここで一発食らって病院のベッドで目覚めるほうがよっぽど楽というものだ」
“本気を示す”と言った時点で板東が銃口をこちらへ向けていた。
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