140人が本棚に入れています
本棚に追加
振り出しに戻された気分にもなって、スタート地点に着地した。
前転して勢いを抑え、立てひざの姿勢でハンドガンを構える。
「止まれ!」
照準をつけた先に、フードをかぶった何者かの背中。
そいつは立ち止まって、ゆっくりこちらを振り向いた。
(……女?)
上背はそれほど高くない。
細いベルトがついたグレーパーカーには、女性のものと思われる2つのふくらみがあった。
夜景の光だけではその素顔を映し出せなかったが、暗がりで妙にあやしく光る深い紫の瞳だけは確かめることができた。
「近付かナイほうがイイ。
私の中には爆弾がシカケられてル」
そいつの第一声は少女の声音だったが、抑揚の少ない、たどたどしさがあった。
「どういうことだ?
何を言ってる?」
「信ジテくれルことを祈ル。
いつボタンを押さレルか分からナイから」
いぶかって問いかけても、少女の言葉の意味が分からない。
「とにかく、本部まで来てもらおう。
話はそれからだ……」
最初のコメントを投稿しよう!