・第1話〔1〕

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   丸腰のようだったので、しぎなは銃口を差し向けたまま立ち上がり、相手に近付こうとした。   だが、ハンドガンを下ろして少女の腕をつかもうとした途端、その少女の姿が突然眼前から消えてしまった。     「なっ!?」      あり得ない現象に、しぎなは面食らって目を丸くした。   彼の手が暗闇をつかみ、足音だけが遠ざかる。     「しまった!」       すぐさまトリックだと気付いて片目を閉じたが、少女の背中はビルの端から下界へ飛び降りる所だった。   これはクラッキングを使った映像トリック。   つまり、何らかの方法で通信に介入し、少女の姿を塗りつぶした映像を彼のインナーディスプレイに表示させたのだ。   結果、あたかも彼女が透明人間になったように錯覚させられた。   しぎなの片目を閉じるという行為は、インナーディスプレイを即席的にOFFにして真実の光景を見るための手段だ。    この数歩の遅れは致命的だった。  
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