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丸腰のようだったので、しぎなは銃口を差し向けたまま立ち上がり、相手に近付こうとした。
だが、ハンドガンを下ろして少女の腕をつかもうとした途端、その少女の姿が突然眼前から消えてしまった。
「なっ!?」
あり得ない現象に、しぎなは面食らって目を丸くした。
彼の手が暗闇をつかみ、足音だけが遠ざかる。
「しまった!」
すぐさまトリックだと気付いて片目を閉じたが、少女の背中はビルの端から下界へ飛び降りる所だった。
これはクラッキングを使った映像トリック。
つまり、何らかの方法で通信に介入し、少女の姿を塗りつぶした映像を彼のインナーディスプレイに表示させたのだ。
結果、あたかも彼女が透明人間になったように錯覚させられた。
しぎなの片目を閉じるという行為は、インナーディスプレイを即席的にOFFにして真実の光景を見るための手段だ。
この数歩の遅れは致命的だった。
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