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少女が飛び降りた地点へあわてて駆け寄っても、後ろ姿も見つからない。
身を乗り出して眼下を凝視してみても、大通り越しに並立するオフィスビルを眺め回してみても、無駄だった。
「……あの子が、黒幕?」
もはや追いかける手立てがないとあきらめて、しぎなはつぶやいた。
あの子が板東まさぎをそそのかした黒幕だったのだろうか。
あるいは、ケイトが捕らえ損なった1人というだけのことだったのかもしれない。
チームの通信に介入し、細工を施した映像をリアルタイムで流すような者が、とても素人とは思えなかったが。
テロリストを排除するというミッション自体は成功したものの、素直に喜べない結末となってしまった。
街なかの喧騒と鮮やかな照明が何事もなく街じゅうにあふれている。
爽快とは言えない生ぬるい夜風だけが、ビル際に立ち尽くすしぎなを通り過ぎてゆく。
事件は、始まったばかりのようだった。
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