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『本社ビルとはいえ、ここはほとんど資料館よ。
居残ってたのはサーバーのメンテナンス要員だぁけ』
仲里課長がメガネのずれを指先で直しながら、くしゃくしゃにセットされたブロンドの男性、
“ケイト”に面倒そうに返答をやった。
ケイトもまた、苦笑混じりに言う。
『あとはみんな在宅社員か。
考えてみりゃあ、出勤なんて必要ないよなぁ。
家のソファに座りながら、脳内にあるコンピュータで仕事ができるんだからな。
社員とのやり取りも、全部“UAR”で済ませちまえるし』
彼の言葉は大げさでもいつわりでもなかった。
この時代のほとんどの人間は、本当に脳内にコンピュータを構築していたのだ。
仲里課長が続ける。
『その“脳内コンピュータ”の産みの親が、ここセクエンスコーポレーションということよ。
ビル内に立てこもった犯人グループは、過去にセクエンスコーポ関連の施設で“施術”を受けて失敗してる。
重大な障害に対してのさらなる賠償責任の追及が彼らの最終的な目的らしいわ』
「“コーディングエラー”か……」
過去に起こった事件を思い出し、しぎなが一言。
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