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車体に付いた数個のレーダーカメラによる全天周監視と、完全歩車分離型交通網により、交通事故は皆無となり、信号機や横断歩道は姿を消した。
しぎなとケイトは今、黒のセダンに乗って地上道路を浮揚走行している。
といってもハンドルを握って運転しているわけではなく、2人ともシートに深く背中をあずけて目的地に着くのをただ待っているだけだった。
少女の捜索を任された彼らは、ホークアイシステムでは確認しきれない地点をしらみ潰しに当たっている。
要するに、潜伏先の特定を行なっているわけだ。
課長からのコールがかかってきたのは、工業地帯での捜索を終えて市街地に戻ってくる途中だった。
『目的地設定を送るわ。
少女はそこにいる可能性がある』
「分かったのか?」
眼前に浮かぶウィンドウの中の仲里課長が自信ありげに言ったので、しぎなは思わず聞き返した。
『ええ、とえりがやってくれたの』
課長が今度は自慢げに言い、同時に車のフロントガラスが次の目的地候補までのルートマップを映し出した。
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