・第1話〔3〕

12/19
前へ
/673ページ
次へ
   全くもってありがたい説法にこちらが承服すると、ケイトは満足げにうなずいて再び歩き出した。    幅広な河川といっても水量は少なく、川底の白いコンクリートが半分以上むき出しだった。   車道橋と高架歩道が日光をさえぎってできた薄暗がりに、くだんの地下水路への入り口がある。     「ここだな?」      視界のすみに表示しているのだろうルートマップを確認しつつ、ケイトが言った。   近付いてみたが、のり面に四角く掘り抜かれた地下水路の奥は、全くの暗闇で何も見えない。     「リングメイル、ON。 ナイトビジョン、ON」      しぎながチークボタンに触れてつぶやいた。   全身の筋肉がざわめき出し、緊張をたもったまま静まる。     「音声入力か……。 コマンド入力のほうが楽じゃないか?」      言いつつケイトも空中に手指を踊らせて、しぎなと同じような機能を立ち上げた。     「コマンドツリーをたどるのがどうにも面倒だ」      最後にしぎなが返して、2人は無駄口を封印した。   両者ともハンドガンを両手で把持して、暗闇の中へと慎重に足を踏み入れる。  
/673ページ

最初のコメントを投稿しよう!

139人が本棚に入れています
本棚に追加