・第1話〔1〕

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  『だけど、役員会は施術同意書を盾に犯人の要求をつっぱねてる。 もとより無理な要求よ。 すでにセクエンスコーポは賠償責任も刑事責任も果たしてるわけなんだから。 あわれなテロリストたちね、どんなヤツにそそのかされたんだか』      仲里課長は当然のように黒幕の存在を断言した。   直後、“voice only”の小さなウィンドウが現れて新たな無線通信が入る。     『ワンウェイガラスの透明化、準備完了!』     『しぎな、行って』      最後に課長からのゴーサインを受けて、しぎなはひとつ深呼吸をすませた。   立っている場所からゆっくり10歩下がり、立ち止まって目測をつける。     『さあ、ひっぺがしなさい!』      仲里課長が高揚して言い放ち、3人分のウィンドウが立ち消えると、どこかで何かの電源が落ちるような音が響く。   同時に、それまで内部の様子を薄黒く隠していた向かいのビルの全面窓が、無色透明に切り替わった。    ワンウェイガラスというのは、外からの光だけを中へ通し、中からの光は外へ通さない、カーテンのいらないガラスのことだ。  
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