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『だけど、役員会は施術同意書を盾に犯人の要求をつっぱねてる。
もとより無理な要求よ。
すでにセクエンスコーポは賠償責任も刑事責任も果たしてるわけなんだから。
あわれなテロリストたちね、どんなヤツにそそのかされたんだか』
仲里課長は当然のように黒幕の存在を断言した。
直後、“voice only”の小さなウィンドウが現れて新たな無線通信が入る。
『ワンウェイガラスの透明化、準備完了!』
『しぎな、行って』
最後に課長からのゴーサインを受けて、しぎなはひとつ深呼吸をすませた。
立っている場所からゆっくり10歩下がり、立ち止まって目測をつける。
『さあ、ひっぺがしなさい!』
仲里課長が高揚して言い放ち、3人分のウィンドウが立ち消えると、どこかで何かの電源が落ちるような音が響く。
同時に、それまで内部の様子を薄黒く隠していた向かいのビルの全面窓が、無色透明に切り替わった。
ワンウェイガラスというのは、外からの光だけを中へ通し、中からの光は外へ通さない、カーテンのいらないガラスのことだ。
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