・第1話〔4〕

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  実際に見ている景色にCGを混ぜ合わせ、それらがあたかもそこにあるように感じられる技術。   それがUAR、“超拡張現実(ウルトラオーギュメンテッドリアリティ)”というものだった。   本当に現実にあるのは、イスや机などの家具、衣類、食料。   時代が進んでも、衣食住が人間にとって必要最低限の要素であるということは変わらなかった。    帰宅してシャワーで汗を流したあと、照明を抑えた薄暗いリビングで、次の出勤までだらだらと過ごすのが夏場においてのしぎなのルーティンだった。   パンツ一枚でソファにくつろいでいた時、同僚からのコールを受ける。   通話に出た所で、相手に表示されるのは今の自分の姿ではなく、あらかじめ作成しておいたアバターだ。   引き締まった肉体をさらけ出したまま、濡れた髪をバスタオルで拭いながら彼は応じた。     『俺だ。 鑑識の報告書が回って来たんだが、目を通しておいてくれ』      目の前に立ち上がったウィンドウに、赤い瞳のスキンヘッドが表示される。   遠距離支援担当のイッサだ。   これもまた、UAR通信技術の一種で、“ポップアップ通信”と呼ばれるもの。  
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