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それが今、しぎなの仲間の手によって一時的に解除されたのである。
予想通り、セクエンス本社ビルの裏手通りにあたるこちら側の面には、犯人グループの姿は見当たらない。
しぎなは再びチークボタンに触れて、つぶやいた。
「リングメイル、ON。
GCデバイス、ON」
ほどよく引き締まった彼の全身が目覚めたようにざわめいた。
黒の着衣に、薄く小さな金属板を組み合わせたボディアーマーと、4つのパーツでスネを囲うサポーター。
筋肉にほどこした衝撃偏向機構“リングメイル”と、脚部に仕込んだ重力制御機構“GCデバイス”が、身を守るための防具。
そして、クラッシュ弾という特殊な銃弾がこめられたハンドガン一丁と、己自身の拳のみが、彼の武装だった。
「…………」
身長185cmの長身が、一度低く腰を落としてから掛け声もなく駆け出した。
まっすぐ端っかどに向かって突っ走る。
短い助走を経て、あと少しで転落、というところで斜め上空へ。
跳ぶ。
80kgの肉体が、重力を半分無視して空へ跳び上がった。
向こうのビルまで20m、高さの差は10m。
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