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どうせまともな答えは返ってこないだろうと睨みつつも、ひとまず質問を続けて腹の内を探ってみる。
相手はしばらく沈黙してから緊張ぎみに深呼吸を行なった。
一つ一つの動作が、いちいち慎重で鈍い。
次の言葉に詰まっていたらしかったが、やがて決心したように告げてきた。
『……言い方を変エル。
私にかかワルと、何人もシぬ、ことにナル。
それデモいいナラ、仕事、ツヅけるといい』
「言いたいことは、それだけか?」
今の少女のセリフは、とてもプロとは思えないほど幼稚な脅迫だった。
“私の中に爆弾が仕掛けられている”。
先日の彼女が言ったことを思い合わせてみても、どうにも狙いが見えてこない。
こちらに脅しが通用しないと理解したのだろう、彼女は横を向いて落胆混じりのため息をついた。
そうして、今度は部屋の中を歩き始め、左右を眺めつつ吐き出すようにつぶやく。
『いいトコロ住んデルね』
「…………」
突然、他愛のない話を少女が始めようとしたので、しぎなは内心ますます困惑してしまった。
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