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さすがに返す言葉が思い浮かばず、少女を注視するしかない。
彼女はしぎなの正面で立ち止まって、こちらを向いた。
「…………?」
何をするのかと不思議に思っていると、少女は天井を見上げ、そして言う。
『私も、こんなトコロ住んでみタい……』
「…………!?」
彼女がその短いセリフの間に、右手を胸の高さまで持ち上げて“ハンドシグナル”を送ってきたのをしぎなは見逃さなかった。
最初に握り拳を作り、次に望遠鏡の要領で筒を作り、そしてふたたび握り拳。
この3つを瞬時に送ってきたのだ。
右手が下ろされると、最後にまたこちらを見て、一言。
『なずさ……』
その声が終わると、途端に少女の姿が歪み、一瞬にして立ち消えた。
一拍遅れて“communication error”の文字も消える。
静かになる室内。
「…………」
しぎなは今起きたことをうまく整理できず、ずいぶん長い間呆然としていた。
結局、何の目的だったのかが分からない。
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