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果たして、少女の言い残した言葉“なずさ”は、少女の名前ということなのだろうか。
それとも単に、ケイトが言っていたように、捜査を撹乱するためにハッタリをかまされただけなのか。
すべきことを彼が思い付いたのは、少女が去ってずいぶん経ってからだった。
「コール、レジスタ……」
右ほほのチークボタンを右手の中指で触れて、“着信履歴”を呼び出した。
が、最新の欄にはイッサの名前しかなかった。
「コール、……リダイヤル」
納得しきれず、少女との再通話を試みる。
短い呼び出し音ののち立ち上がったウィンドウには、やはり同僚の浅黒い顔が表示されただけだった。
イッサだ。
『どうした?』
「今、少女が現れた……」
『なに?
どういうことだ……』
起こったことを端的に伝えると、怪訝な顔と声が返ってくる。
「イッサとの通話後に、あの子がアクチュアル通信で俺の部屋に現れたんだ」
『それは本当か。
で、どうした?』
「捜査をやめろと脅迫してきた……」
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