・第1話〔4〕

10/19
前へ
/673ページ
次へ
  果たして、少女の言い残した言葉“なずさ”は、少女の名前ということなのだろうか。   それとも単に、ケイトが言っていたように、捜査を撹乱するためにハッタリをかまされただけなのか。   すべきことを彼が思い付いたのは、少女が去ってずいぶん経ってからだった。     「コール、レジスタ……」      右ほほのチークボタンを右手の中指で触れて、“着信履歴”を呼び出した。   が、最新の欄にはイッサの名前しかなかった。     「コール、……リダイヤル」      納得しきれず、少女との再通話を試みる。   短い呼び出し音ののち立ち上がったウィンドウには、やはり同僚の浅黒い顔が表示されただけだった。   イッサだ。     『どうした?』     「今、少女が現れた……」     『なに? どういうことだ……』      起こったことを端的に伝えると、怪訝な顔と声が返ってくる。     「イッサとの通話後に、あの子がアクチュアル通信で俺の部屋に現れたんだ」     『それは本当か。 で、どうした?』     「捜査をやめろと脅迫してきた……」  
/673ページ

最初のコメントを投稿しよう!

140人が本棚に入れています
本棚に追加