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この2年、密かに探ってもいた。
あと少しで、実態がつかめそうなところまで来ていた。
板東まさぎという怪物を育て、世界を都合のいいように組み替え、双葉なずさという悲しき生命を産み出した、元凶。
“白カラス”。
今なら、板東まさぎが警告していたことが何か、分かる気がする。
自分の思考が、心が、誰かに歪められていたのかもしれないことを。
進化を急いだせいで、人間に本来備わっていた能力が、退化してしまったらしいことを。
なずさと過ごした時間の中で、しぎなはそれを取り戻してもいたのだ。
もし、あの場面で、しぎなが撃たなければ、たちまち気付かれてしまうだろう。
奴らにとって、“都合の悪い人間が生じた”と。
相手の姿が見えるまでは、勘付かれてはいけない。
たとえ敵が、世界を取り巻くほどの巨大なものだったとしても。
決して立ち止まってはいけないのだ。
ひずんだコードを、正しく書き直すために。
それが、この2年でたどり着いた答えだった。
しぎなは、両目を閉じ、唱える。
「レコーディング、フィニッシュ」
── おわり ──
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