・第6話〔6〕

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   この2年、密かに探ってもいた。   あと少しで、実態がつかめそうなところまで来ていた。   板東まさぎという怪物を育て、世界を都合のいいように組み替え、双葉なずさという悲しき生命を産み出した、元凶。    “白カラス”。   今なら、板東まさぎが警告していたことが何か、分かる気がする。   自分の思考が、心が、誰かに歪められていたのかもしれないことを。   進化を急いだせいで、人間に本来備わっていた能力が、退化してしまったらしいことを。   なずさと過ごした時間の中で、しぎなはそれを取り戻してもいたのだ。   もし、あの場面で、しぎなが撃たなければ、たちまち気付かれてしまうだろう。   奴らにとって、“都合の悪い人間が生じた”と。   相手の姿が見えるまでは、勘付かれてはいけない。   たとえ敵が、世界を取り巻くほどの巨大なものだったとしても。   決して立ち止まってはいけないのだ。   ひずんだコードを、正しく書き直すために。   それが、この2年でたどり着いた答えだった。    しぎなは、両目を閉じ、唱える。     「レコーディング、フィニッシュ」           ── おわり ──  
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