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結局、数分間の奮闘むなしく、すぐに解散となる。
もとの部屋に戻ってしぎなは、どうにも消化不良で気が晴れなかった。
少女との素粒子越しの対話。
それが意味するものを見いだせない。
気が付けば、右上に常に小さく表示してあるデジタル時計が、0時を回っている。
少女が再度接触してくる可能性を危惧して、しぎなは“ハンドシグナル”について書かれたウェブページでも漫然と眺めて過ごすことに決めた。
翌朝。
ずいぶん遅い出勤となったが、警安特課のオフィスには、とえりとケイトの2人のみがいるだけだった。
「よう、しぎな。
あれから女の子は来たか?」
「いいや、全く……」
入室するとさっそくケイトが、自分のデスクから興味津々といった様子で話しかけてきた。
しぎなはまだ寝起きの気分が抜けきれないままの顔で返す。
「私も色々とやってみたのですが、やっぱり追跡できませんでした」
残念そうに言ったのはとえり。
口振りから察すると、ミーティングのあとも少女のログを探るのに骨を折ってくれたらしい。
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