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「面倒をかけたようだな。
ケイトの言った通り、向こうはただ者じゃなかった」
しぎなは苦笑混じりに吐き出して、自分のデスクに着いた。
キャスターチェアに腰を据え、ひじをつく格好で机上に手の平をかざす。
天板のコンピュータが、指先に仕掛けられた“パーソナルタグ”を読み取ると、彼のファイルを開いた。
ふと、しぎなは自分の手に目が留まる。
昨日、少女とのやり取りで生じた奇妙な謎を思い出す。
もしかしたら、ハンドシグナルではないのかもしれない。
例えば、若者の間で流行しているしぐさとか、ロックバンドのパフォーマンスとか。
思い付いて2人に問い掛ける。
「ああ、これ何のサインだとか、知ってるか?」
そう言ってしぎなは、昨日少女がやったハンドシグナルを実演した。
右手を持ち上げて、こぶしを作り、筒を作り、こぶしに戻る。
「というヤツなんだが……」
「ぶははっ」
やり終わって最初に噴き出したのはケイトだったが、とえりも手で口を隠してしっかりと噴き出していた。
「ふふ……ネコ?」
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