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左を向けば、風になびく穴開きのブルーシートが確認できる。
ふとドアが閉まる音がして右を向くと、あわただしい足音がそれに続いた。
『データを送ります……』
とえりから通信が入り、見ている景色にワイヤーフレームがオーバーラップする。
赤いシルエットが通路の奥の非常階段を上る姿まで丸見えだった。
ここまでは前回と同じ要領だ。
しぎなはすぐさまそちらへ向かい、ドアを開けて階段室へ踏み入った。
踏み入った途端、かつかつと階段を駆け上がってゆく音が大きくなる。
自分もハンドガンを上向きに構えつつ、階段を上り始める。
足音は21階のドアに消えていった。
しぎながそこへたどり着き、閉まったばかりのそのドアを勢いよく開け放ってフロアへおどり出る。
「なにっ!?」
目に飛び込んだのは、人影。
合わせて6人の男が通路の両脇に立っていて、その間を少女らしき後ろ姿が駆け抜けてゆくところだった。
こちらを見つけた男たちが、手に持っていたSMGを構え始める。
しぎなは泡を食って、かぎなりになった通路の角へと跳躍して待避した。
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