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自嘲気味にしぎなは吐き出したが、しかし気付いただけでも良かったのかもしれない。
つまり、そういうことだ。
前回しぎなは少女の姿を塗りつぶした映像を見せられたが、今回は逆に“効果音付きの幻”を映像として見せられたわけだ。
今しがたかき消えた男たちと、板東まさぎがテロリストと接触した際、使用したというアバターの人相とも合致する。
モニター越しに見ていた課長は、例の透明人間がいると勘違いしたのだろうが。
おそらく、ハブコンにアクセスした時、敵の仕掛けた罠に引っ掛かってしまったのではないか。
男たちの気配が消え失せて残ったのは、少女のものと思しき足音だけだった。
インナーディスプレイ上の幻影が取り払われ、しぎなは追跡を再開する。
長い通路を通り過ぎ、広々とした休憩室を抜け、次のドアをくぐった所でようやく少女の背中を捉えた。
「止まれ!」
警告してみるが、従う様子はない。
と、そんなことを言うつもりはなかったのだが、しぎなは言葉に詰まって、思わず口をついて出てしまった。
「なずさ……!!」
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