・第1話〔5〕

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   自嘲気味にしぎなは吐き出したが、しかし気付いただけでも良かったのかもしれない。   つまり、そういうことだ。   前回しぎなは少女の姿を塗りつぶした映像を見せられたが、今回は逆に“効果音付きの幻”を映像として見せられたわけだ。   今しがたかき消えた男たちと、板東まさぎがテロリストと接触した際、使用したというアバターの人相とも合致する。   モニター越しに見ていた課長は、例の透明人間がいると勘違いしたのだろうが。    おそらく、ハブコンにアクセスした時、敵の仕掛けた罠に引っ掛かってしまったのではないか。   男たちの気配が消え失せて残ったのは、少女のものと思しき足音だけだった。   インナーディスプレイ上の幻影が取り払われ、しぎなは追跡を再開する。    長い通路を通り過ぎ、広々とした休憩室を抜け、次のドアをくぐった所でようやく少女の背中を捉えた。     「止まれ!」      警告してみるが、従う様子はない。   と、そんなことを言うつもりはなかったのだが、しぎなは言葉に詰まって、思わず口をついて出てしまった。     「なずさ……!!」  
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