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一つのドアに入っていこうとする彼女の足が、一瞬止まった。
ズドンッ。
その後ろ影にハンドガンの狙いを定めて、ためらわず撃つ。
「アアッ!!」
少女は悲鳴を上げて、弾を見舞った左肩から前のめりに卒倒する。
閉まる自動ドアが、その姿を隠した。
放ったのは、弾頭がスポンジ構造をした“クラッシュ弾”と呼ばれるもの。
着弾した物の材質によって、効果が変わるという代物だ。
すなわち、プラスチック以上の硬度で中に仕込んだ炸薬が炸裂するが、人肌に対しては炸裂しない代わりに弾頭がつぶれて衝撃を抑え、ゴム弾と同等の威力となるのだった。
「…………」
しぎなはドアの前まで詰め寄って、わずかに息を整えた。
ハンドガンを構えたままセンサーに手を触れると、ドアはすみやかにスライドして開いた。
中もまた薄暗く広やかな部屋。
幸い、ソファやチェストといった、身を隠すための地物となり得るものは多い。
青白いウォールライトが床のみを照らしていて、部屋の中ほどに仰向けに倒れている少女が見える。
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