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その発信装置を破壊すればクラッキングを阻止することも可能だったが、巧妙に隠されているらしく上手くいかなかった。
『へえ、結構耐えるね。
じゃあ、これはどうかな?』
明らかに楽しんでいる声音で、板東がインナースピーカーに現れた。
その直後、色の異なるウィンドウが6つ表示され、膨大な行数のスクリプトやバイナリが下から上へと流れてゆく。
“リモートアプリ”や“高度計”、“緊急時転送アプリ”の文字が見えた。
セキュリティソフト以外に対抗する手段のないしぎなは、開かずのドアに体当たりを試すくらいしかできない。
一刻も早くこの部屋から脱出することこそが、このデジタル攻撃を回避する唯一の方法だった。
だが、それは叶わなかった。
とうとうクラッキングが成功したのだろう、急き立てるような確認音が矢継ぎ早に鳴ってウィンドウが消えてゆく。
『弾丸をも弾く体か、すごいね。
でも、弾く方向が違ったら、どうなるかな?』
またしても、板東のふてぶてしげな声が頭に響く。
「がっ!!」
何が起こったのか、全く分からなかった。
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