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耳鳴りは強烈に両耳を支配しているし、全身の痛みにともなって寒気をも感じる。
血を流しすぎたか、思うように力が入らない。
旗色は極めて悪かった。
『ようやくリミッターが外れたか。
さて、そろそろ終わりにしよう』
このままなす術もなく、ただ一方的になぶり殺されるだけなのか。
自らの手を汚さず、ゲームか何かのように犯罪を楽しむ、こんな奴に。
「…………」
ふと、しぎなは視界の端に、身に覚えのない一つのアイコンを見付けた。
六角形のタイルをつなぎ合わせたカイトシールドがモチーフの、見るからに防御力が高そうなアプリだ。
もしやと思い、ハンドガンを手放して腕を伸ばし、薄れゆく意識を奮い立たせてそれに触れてみる。
短い確認音。
全ての表示が一旦停止。
光るアイコンからヘックス状格子が広がってゆく。
『な……なんだ?
あっ、くそっ!!
入られた!?』
狼狽する板東の声に続き、しぎなへの攻撃がすみやかに止んだ。
ノイズやモザイクや警告表示を一掃しながら眼界いっぱいに広がったヘックスは、ありとあらゆるパラメーターを浄化する。
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