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ふと気付くと、背後でドアを叩く音がする。
「…………」
聞く内に音は次第に強くなり、やがてガンガンと激しく鳴り出した。
横たわるしぎなが首をわずかに傾げてそちらをうかがうと、どうやらハンマーか何かでドアを打ち据えているようだ。
向こう側にいるのは社員か、警備員か。
あるいは敵だとしても、相手をする余力などない。
最後に金具が弾け飛ぶ音がして、何かが隙間に差し込まれ、頑丈そうなドアがごろごろとスライドしてゆく。
開かれた戸口に現れたのは、ファイアーアックスを手にしたケイトだった。
「おいおい、マジか!
しぎな!」
アックスを放り投げ、慌てた様子で彼が駆け寄ってくる。
しぎなはひざ立ちになったケイトに抱きかかえられ、彼が上着の内ポケットから出してきた止血用のスプレーで応急処置を施された。
射出口から白い粘着剤を吹き付けて、患部をラッピングするものだ。
幸いというべきか、裂けていたのはごく浅い部分だけらしく、左腕の止血には程なく成功した。
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