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「すまん、ケイト……。
あの子は……」
「いいさ、しゃべるなよ、大丈夫だ」
交わせる言葉はその程度だった。
「医療班をよこしてくれ!
今すぐだ!」
ケイトは空中を睨み付けて、通信相手に指示を飛ばしつつ作業を続けた。
ドアが開かれたことで、回線もつながったらしい。
しぎなはそろそろと右手を持ち上げて、ポロシャツの胸ポケットから一枚のカードを取り出した。
後輩が用意してくれた“ハンドモバイル”は、一仕事を終えて燃えるような熱をはらんでいた。
「デカい……借りができたな……」
苦笑いを浮かべて、独りつぶやいた。
遠のく意識の中で、動かない少女を見やっておく。
未だ多くの謎が残されていたが、彼女の口から明らかとなるだろう。
あとは捜査が進展することを願うばかりだ。
板東まさぎが捕まることを期待して、しぎなは静かに、目を閉じた。
── つづく ──
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